現役専門医が解説!無痛分娩のメリットデメリット、費用、赤ちゃんへの影響は?

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現役専門医が解説!無痛分娩のメリットデメリット、費用、赤ちゃんへの影響は?

こんにちわ!産婦人科医のとんたんです。

無痛分娩は良いとか良くないとか根拠のない噂もあって、正しい知識がほしいですよね。

芸能人の男性が、「旦那様に無痛おねだりするか」なんてひどいこと言っていたね~

「出産の大変さをわかってない」「旦那様に無痛 分娩
ぶんべん
 をおねだりって何?」と批判の声が殺到したそうだよ。そんな事言う人がいるなんて情けなくて残念なことだね。

「もっと早く知っていればよかった」とか、逆に「こんなはずじゃなかった」なんてことのないように、現役専門医のとんたんが無痛分娩のメリットデメリット、赤ちゃんへの影響などについて正しい情報をお教えします!

自然分娩にするか無痛分娩するかで迷う方、無痛分娩に対する周囲の無理解に戸惑う方はぜひ参考にしてください。

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無痛分娩とは?

硬膜外麻酔
日本産科麻酔学会

無痛分娩とは硬膜外麻酔によって陣痛を緩和しながら行う出産のことで、痛みや不安などを緩和することができます。

妊娠・出産は女性にとって負担の大きいものですが、無痛分娩はそれを痛みを完全に取り除くことはできないものの、軽減する手段の一つと言えるでしょう。

ただし、無痛分娩には、分娩が長時間化したり麻酔が十分効かない、麻酔による事故の可能性など、一定のリスクがあることを知っておかないといけません。

妊婦さんによっては無痛分娩とはどういうふうに無痛するのかぜんぜん知らなくて、すごく不安な方が多いのよね。

麻酔による胎児への影響はほとんどないけど、母体の危険は胎児の危険にもつながるということを理解しておくことが大切だね。

無痛分娩は過去に医療過誤も起こっています。被害を避けるためにも自然分娩にするか無痛分娩にするかについては慎重に判断しましょう。

無痛分娩は妊婦さん自身が選んで決めることができない日本の風潮

SRHRという言葉をご存知でしょうか。これは「性と生殖に関する健康と権利」を表す言葉です。

今までは、日本ではどちらかといえば女性が産みの苦しみにこらえて出産することが美徳とされてきました。

ところが、陣痛は非日常的な痛みを伴いますから、周囲の人からに我慢を強いられることなく、赤ちゃんを産む女性自身が産み方を決めるべきだという考えが広まってきているのです。

産み方を女性自身が決めるのは当たり前なことなんだけど、義理のお母さんとかが良い顔しないってよく聞くわ~。

だから、自然分娩が良いとか無痛分娩が良いとかいう議論以前に、無痛分娩をしたい女性が、周囲の人の顔色を気にして仕方なく自然分娩を選ばざるを得ない、という風潮は変わっていってほしいと思うね。

あまり知られていない事実「無痛分娩は完全に痛みがなくなるわけではない」

無痛分娩は麻酔薬で痛みを緩和するものです。

例えば外国で例えるなら、無痛分娩はアメリカやフランスでは出産の7~8割を占めています。

それに対して日本は1割程度なのは、麻酔科医の人数が日本は少ないという理由があります。

無痛分娩に対応している施設が少ないというのが日本で無痛分娩が普及しない理由と言えるでしょう。

麻酔の効き方は個人差が大きくて、場合によっては低血圧になる、陣痛が弱くなるなどのリスクがあるため、それを調整できる麻酔科医がもっと必要なのが現実です。

そして無痛分娩は完全に痛みがなくなるわけではありません。

出産の状況に応じて数回に分けて少しずつ麻酔を入れるため、急激に一瞬で効くというわけにはいかないからです。

妊婦さんに無痛分娩の話をしているとき、よく驚かれるわ。

無痛分娩のメリット・デメリット

自然分娩とは違い、無痛分娩を経験している女性が日本ではそんなに多くないため、インターネット上でもあまり多くの方の感想や意見が書かれているわけではありません。

何度も説明している通り、出産や麻酔の効き方は千差万別のため、誰かが「無痛分娩は○○だった!」と言っていても、ほんのいち個人の経験談に過ぎず、別の妊婦さんに当てはまるとは限らないのです。

そのため、専門医がきちんとここで無痛分娩のメリットとデメリットを解説します。

メリット

  • 痛みを和らげることができる
  • 出産後に体力を温存することができる
  • 不安を軽減しリラックスしてお産に臨むことができる
  • 緊急帝王切開に対応しやすい

無痛分娩では硬膜外麻酔を使用しますが限定範囲にだけ作用するため、血液内に入る薬の量はごくわずかです。

現在、日本で使用されている麻酔薬はそのものに鎮静作用があるものは少ないため、わずかに胎盤を通過しますが、赤ちゃんが眠ったまま生まれるといったような影響はありません。

無痛分娩でお母さんが死亡する確率が心配な方がいらっしゃいますが、 無痛分娩の麻酔が原因で母体が死亡するのは、全国で2~3年に1例と言われています。

日本で行われている無痛分娩は年間に5~6万件と考えると、多く見積もっても10万人に1人の発生頻度ということになります。

心拍状態が悪化するという懸念がある方もいらっしゃいますが、無痛分娩導入直後に一過性に悪化する場合がありますが、ほとんどの場合、5分くらい以内に回復します。

局所麻酔薬の影響は出ず、母乳への影響もありません。

デメリット

無痛分娩が生まれてくる赤ちゃんに悪影響をおよぼすことはごく稀です。

ただし、陣痛促進剤の使用で陣痛が強くすぎると赤ちゃんに機能不全が起きる危険性があります。

また、自然分娩に比べると吸引分娩となる場合が多いですので、楽観視はできません。

後遺障害が出る恐れがある

無痛分娩で分娩がもし長引いた場合、母体の神経は長時間赤ちゃんに圧迫されることになり、神経障害や排尿障害などの後遺障害が発症する恐れがあります。

また、無痛分娩開始後には高熱や頭痛などの副作用が出ることもありますので、無痛分娩のケースが少ない施設では安易に実施の判断はしないほうが良いです。

無痛分娩による事故の事例

過去に無痛分娩による医療過誤がないか気になると思います。

神戸市西区の産婦人科医院で2015年9月、無痛分娩で出産した30代の女性は35歳で死亡。

出産した長男は一時は肺炎で危篤状態になり、重い障害を負いました。

硬膜外麻酔の開始直後、院長は外来診察で呼ばれ離席してしまい、クリニックは過失があったと認め、示談金を支払いました。

本来硬膜外に注入するはずの麻酔薬を硬膜内に注入していて、全脊髄麻酔となり、心臓が停止してしまったのです。

極稀なケースとはいえ、過去にこのような事故があったという事実は重く受け止めないといけません。

・痛みが緩和される分、出産時の異変に気付きにくい

・母体側も、血圧低下・嘔吐のほか、神経障害・髄膜炎・全脊麻・頭痛・局所麻酔薬中毒など合併症を生じることがある

・麻酔によって母体の状態が悪くなった場合に赤ちゃんの状態も悪くなることがある

・陣痛促進剤を使用すると陣痛が強くなりすぎて赤ちゃんに機能不全を起こす可能性がある

きちんとリスクを把握しておくことが大事だね。

無痛分娩が難しいケース

次のような方は、無痛分娩には向いていないと考えてください。

  • 極度の肥満の方
  • 心臓や血液や神経に病気を抱えている方

肥満の場合、硬膜外麻酔が難しくなります。

脂肪で背骨の位置がはっきりわからなければ、的確な位置に麻酔針を刺すことができないからです。

病気の種類や状態によって判断は分かれますが、心臓や血液、神経に病気を抱えている方も無痛分娩は難しいとされます。

無痛分娩の赤ちゃんに対するリスク

前述のとおり、無痛分娩が生まれてくる赤ちゃんに悪影響をおよぼすことは、ごく稀ではあります。

しかし、陣痛促進剤を使うことで陣痛が強くなりすぎると赤ちゃんに機能不全が起きてしまったり、普通分娩に比べ吸引分娩となるケースが多いといったリスクは、少なからずあります。

過度に恐れる必要はありませんが、リスクは決してゼロではないということは理解しておきましょう。

無痛分娩の費用はいくら?

最後に、無痛分娩の費用について説明しておきます。

お住まいの地方自治体によっては補助制度などがある場合がありますので、役所に問い合わせてみてください。

無痛分娩の費用は、自然分娩の費用50万円前後に、だいたい10~20万円くらいを足した額が相場です。

ただし麻酔科医による専門的硬膜外麻酔が必要なため、病産院によっては前述のように医療体制に差がありますので費用に大きな差があります。

対応している施設が少ないことが大きな要因です。お金がないから最初から自然分娩をしか選択肢がない、という妊婦さんも結構多いです。

無痛分娩は健康保険の対象外のため、自費となりますので、悩みどころではあります。

まとめ

自然分娩か無痛分娩かは、最終的に自分で判断して決定したいですよね。

自分自身の大切な体や赤ちゃんを守るためにも、より良い判断をしてください。

無痛分娩の他にも、出産で迷っていたり不安だったりすることなど、深刻なことでもちょっとした疑問でも、ぜひ、とんたんにご相談ください!

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とんたん

ブログを見ていただいてありがとうございます。 産婦人科専門医、周産期新生児専門医のとんたんです 産婦人科看護師の嫁と一緒にブログ運営しています このブログでは出産前後の医療的な記事や、ママさん看護師や共働きの家庭に向けた記事を描いています 妊婦さん、ママさんのにためになるようなサイトを目指してがんばります   ▼△▼△医師とんたんの専門について▼△▼△ 産婦人科医で専門は産科全般です。 総合周産期施設で10年勤務し、今も公立病院にて実際に分娩を取ったり、帝王切開などの手術の執刀、妊婦健診をはじめとした外来診療も行っています。 産婦人科専門医のほかに、周産期専門医と超音波専門医を取得しています。 妊娠、出産に関してわからないことがあれば分かりやすくお教えいたします。 また超音波専門医も取得しているので、妊婦健診などのエコーなどでわからないこと、聞きたいことがあれば気軽にご相談ください。 *性別のご確認や、エコーの詳しい内容の説明など

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