こんにちわ!産婦人科医のとんたんです。
陣痛とは赤ちゃんを産むときに生じる、子宮(正しくは子宮筋)の収縮のことです。分娩の際に起こる生理的現象で、妊婦さんの意志とは全く無関係に発生しますので妊婦さん自身が陣痛をコントロールすることはできません。
陣痛って妊婦さんにとって本当に痛くてつらいよね~。
今回は陣痛について詳しい解説、少しでも和らげて陣痛を乗り切る方法をお教えします。
目次
そもそも陣痛とは?

陣痛というのは赤ちゃんを産むために子宮が収縮する時に発生する痛みのことです。
妊娠中の女性の子宮は、赤ちゃんが十分に発育するまでは収縮が起こらないようになっていますが、赤ちゃんが外の世界で生きられるまでに育つと、分娩に向けて収縮がはじまり、陣痛がおこります。
陣痛の間子宮は収縮と休止を一定の間隔で繰り返すのですが、子宮が収縮するときのことを陣痛発作といい、このとき特に強い痛みが生じます。
痛みが最高潮に達するとその後は「陣痛間欠」という収縮が休止している期間が来て、痛みがやわらぎ、陣痛が最高潮に達してから陣痛間欠を経て、次の陣痛発作がはじまるまでを1つの陣痛の周期としています。

陣痛がはじまるのは分娩がはじまってからと思うかもしれませんが、陣痛はその前の妊娠中でも起こることがあります。
妊娠中におこる不規則な子宮収縮である「妊娠陣痛」に対して、単に陣痛というときは、分娩が始まる「分娩陣痛」を指します。
初期には稀発しますが、出産が近づくにつれて頻発します。
分娩陣痛

分娩陣痛は字の通り分娩時におこる陣痛で、規則正しく発来する陣痛が10分間に1回または1時間に6回の頻度になった時点から、赤ちゃんが生まれ出るまでにおこる陣痛をいいます。
分娩陣痛の中には、子宮口が全開するまでの子宮収縮である「開口陣痛」、お産で赤ちゃんの娩出により起こる「娩出陣痛」があります。
陣痛の性状


陣痛は持続的な筋肉の収縮ではなく、反復性と周期性とがあって収縮と休止とを交互に繰り返すのですが、その収縮期を陣痛発作、休止期を陣痛間歇といいます。
陣痛の始まりはまるで生理痛のような痛みやお腹をくだしている時のような痛みで、徐々に強くなっていきます。
子宮口が全開になると、痛みが腰全体にまで広がり、焼けつくような、なにか強い力で引っ張られるような痛みになっていきます。
陣痛の自覚症状

陣痛の自覚症状には、腹部の痛みや張り、腰の痛み、おりものや頻尿など様々で、赤ちゃんが骨盤に下がってくることで、胎動を感じにくくなるなどの変化も見られます。
【陣痛の自覚症状の特徴】
- お腹や腰が張る
- 腰の辺りから徐々に体の前面、下半身に広がる痛み
- 動きや姿勢を変えても、治まったり消えたりしない痛み
- 陣痛が規則的になり、次の陣痛がいつ来るのかなどの予測がつく
- 出産までに徐々に間隔が短くなり、痛みが強くなっていきます
【陣痛の前兆】
- 胸のつかえが楽になる
- ももの付け根が張る
- 前駆陣痛が増える
- トイレが近くなる
- おりものが増える、おしるしがある
- 赤ちゃんの動きが少なくなる
- 胃腸への圧迫感がなくなって食欲が出る
- 尿意や便意を頻繁に感じる
- 逆便秘しやすくなる
陣痛はどんな痛み?特徴は?

陣痛にはいくつかの種類があり、様々な名前がついていますので時系列順に詳しく見ていきましょう。
前駆陣痛(ぜんくじんつう)(偽陣痛)

分娩開始前の数時間または数日間におこる不規則な子宮収縮を前駆陣痛という。
前駆陣痛は分娩の前兆として、お産の開始に先行しておこります。前駆陣痛には子宮下部を広げ、子宮頸管(しきゅうけいかん)をやわらかくさせる働きがあります。
【前駆陣痛の特徴】
前駆陣痛は本陣痛の前に起こるお腹の張りや痛みのことで、持続時間や痛みの間隔には規則性がなく、本陣痛と違ってすぐに直接分娩には発展しません。
痛みの持続時間や間隔が不規則で生理痛のような痛みや、下腹部が重い痛み、ギュッと収縮するような痛みを感じる場合がありますが、安静にすると自然と痛みが弱まり、消失します。
個人差はありますが、前駆陣痛は出産予定日の月である臨月(妊娠10ヶ月)あたりから感じる方が多いようです。
分娩陣痛(本陣痛)

出産に直接つながる子宮の収縮で、分娩開始の合図と思いましょう。
正期産に入る37週を超えたらいつ始まってもおかしくありません。
【本陣痛の特徴】
- 10分以内または1時間に6回以上、規則的に痛みを繰り返す子宮収縮
- 前駆陣痛よりも痛みが強く、間隔も規則的になる
- 痛みが徐々に強くなり、痛みの間隔も規則的に短くなる
- 子宮口が開き、赤ちゃんが下りてきて、出産となる
- 安静にしても痛みが弱まらない
【本陣痛と前駆陣痛の違い】

前駆陣痛は痛みの持続時間や間隔が不規則で、しばらくすると自然と治まります。
前駆陣痛の多くは出産が近づいてくる妊娠10か月頃にみられますが、必ずしも前駆陣痛があったからとはいえ、すぐに出産ということもありません。
本陣痛は、出産につながる陣痛で、前駆陣痛は本格的な陣痛の前に子宮頸管をやわらかくして分娩の準備をする陣痛で、しばらく様子を見ても治まることはなく、体の動きや姿勢を変えても痛みは消えません。
前駆陣痛は、初産婦・経産婦に限らず出現しますが、経産婦ならは、本陣痛との違いがわかる方が多いですが、初産婦の場合はどちらか判断がつかない方もいます。
分娩開始

分娩第一期 | 初産婦/経産婦=10~12時間/4~6時間 |
---|---|
分娩第二期 | 初産婦/経産婦=2時間~3時間/1時間~1時間30分 |
分娩第三期 | 初産婦/経産婦=15~30分/10~20 |
合計 | 初産婦/経産婦=12~15時間/5~8時間 |
分娩第1期[開口期]初産婦:10~12時間 / 経産婦:4~6時間 陣痛開始から子宮口が全開大するまで
分娩第2期[娩出期]初産婦:2時間~3時間 / 経産婦:1時間~1時間30分 子宮口が全開大してから赤ちゃんが生まれるまで
分娩第3期[後産期] 初産婦/経産婦=15~30分/10~20分 赤ちゃんが生まれてから胎盤が排出されるまで
分娩時の痛みは個人差があり、多くの産婦さんが陣痛に対して大きな痛みを感じる人で、強い痛みを訴えない人もいます。
時期にもよりますが、子宮収縮によるものでは、下腹部や腰に強い痛みを感じます。
微弱陣痛
微弱陣痛とは分娩開始時より陣痛が微弱なものを指し、続発性微弱陣痛は、正常であった陣痛が分娩の途中で微弱になったものを指します。
陣痛が自覚的あるいは他覚的に弱い、発作の持続時間が短い、間欠時間が長いのいずれかが存在する状態です。
後陣痛(こうじんつう)
後陣痛は分娩終了後におこる陣痛で、出産後、子宮が元の大きさに戻ろうと急激に収縮するので起こりますが、産後1日目が強く、数日くらいでおさまるのが通常です。
陣痛が続く時間はどのくらい?

陣痛が続く時間は、個人差がありますが、初産婦では2~3時間、経産婦では1時間前後です。
陣痛は、子宮が収縮して起こる痛みで、痛みの間隔や強さが徐々に変化していきます。
陣痛の経過は次のとおりです。
- 陣痛開始時は、10分間隔で20~30秒ほど続く
- 陣痛が強くなり、間隔が短くなる
- 子宮口が最大まで開き、陣痛がピークに達する
- 子宮口が完全に開いてから胎児が生まれるまで、初産婦では約2時間、経産婦では約1時間続く
- 胎児が娩出されてから胎盤が娩出されるまで、通常は数分間で終わる
陣痛の持続時間は、子宮口の開き具合によって異なります。

- 分娩第1期:初産婦は約10~12時間、経産婦は約5~6時間
- 分娩第2期:初産婦は約1~2時間、経産婦は約30分~1時間
- 分娩第3期:初産婦は約15~30分、経産婦は約10~20分
お産の前兆 病院へ連絡するタイミングは?

痛みの感じ方は人それぞれで、人によっては前駆陣痛だと思っていたら本陣痛に移行し、すぐに病院を受診すべきな場合もあります。
陣痛が規則的になった時点や次のようなケースでは、病院に連絡をして、医師からの指示を仰ぎましょう。
おしるし

おしるしは、出産前に赤ちゃんを包む卵膜が子宮壁から剥がれることで起こる出血のことで、生理のような量が出る人もいれば、おりもの程度の少量の人もいます。
血性のおりもの状の粘液であり、鮮血とは限らず、薄いピンク桃色や透明、白などさまざまです。
規則的に張りと痛みが来る場合
規則的にお腹の痛みや張りを感じている場合は本陣痛がもう始まっている可能性があります。
陣痛の長さや間隔などを細かく記録して、その内容を医師に連絡をしましょう。
破水した場合

おしるし→陣痛→破水という順番が多いですが破水が先にくる人も少なくありません。
それを前期破水といいます。
診療時間外であってもすぐに病院に連絡してください。
誰かに自家用車を運転してもらうか、タクシーを使用しましょう。
- 羊水と胎児を包む膜が破れ、膣から羊水が流れ出る
- 陣痛が始まる前に破水することもある(前期破水)
- 色は無色透明~やや白濁した色、血液が混じったような薄いピンク色になっていることもあります。
激しい痛みが続く場合
本陣痛のは、痛みを感じる時間と、感じない時間が交互にきます。
痛みのない時間がなく、ずっと激しい痛みが続く場合は何らかの危険な状況が起きている可能性がありますので、すぐに病院に連絡をして受診をしましょう。
その他の異常を感じる場合
出血があったり、赤ちゃんの胎動を感じないなど、通常にはない違和感を感じることがある場合には病院に連絡をし、状況を伝えましょう。
ママさん達を救ってきた陣痛を乗り切る対処法

前駆陣痛は、体の向きを変えるなどの対処法によって痛みが消えたり和らいだりすることがあります。
「前駆陣痛かな?」と思ったら、次のような対処法をとってみましょう。
自然分娩
リラクゼーション法と呼吸法によって分娩中の痛みをコントロールします。
深呼吸をする

深呼吸をすると、体をリラックスさせる副交感神経の働きが活発になります。
筋肉の緊張も和らぎやすくなるため、子宮の収縮も緩やかになり、痛みが治まることがあります。
腹式呼吸は、下腹部が膨らんだり、へこんだりするように呼吸する。
体の向きを変える

仰向けの状態や同じ姿勢をとり続けると、お腹の張りや痛みをより感じやすくなります。
横になりながらも意識的に寝返りをうつなど、体の向きを変えてみましょう。
体の左側を下にすることで下大動脈と呼ばれる太い血管の血流が良くなり、痛みが和らぎやすくくなります。
痛む箇所をさすったり指圧したりする

痛む箇所をさするだけで痛みが和らぐことがあります。
自分でさするのはもちろん、家族にさすってもらうのも良いでしょう。
腰が重く感じる時は、テニスボールなどのほどよい弾力のあるものでグイグイと押す方法も効果的です。
「いきみ逃がし」

いきみ逃がしとは、子宮口が開ききる前のいきみを防ぐことをさします。
これは「ゲートコントロール疼痛理論」と呼ばれる、痛んでいる部位周辺を刺激することで痛みを感じさせる経路を遮断する手法です。
【次髎(じりょう)】
陣痛時に、おしりの穴周辺を押すことで、陣痛の強い痛みを和らげたり、いきみ逃しをしやすくなる場合があります。
仙骨上に左右対称に二つあり、血流を促進し体をリラックスさせ、腰痛緩和に効果が期待できます。
【方法】

- テニスボールやゴルフボールなどを使って、腰やおしりのあたりを押す
- 肛門周辺を押さえてもらう
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【三陰交(さんいんこう)】

女性ホルモンの分泌を促す「安産のツボ」とも呼ばれています。足の内くるぶしから指4本分上にあります。
【太衝(たいしょう)】

足の甲の親指の骨と人差し指の骨の間を足首に向かってたどっていた骨どうしの合流点の手前のくぼみが「太衝」です。
陣痛促進やストレス、不眠、冷えなどに効果があります。
体を温める

体を温めることで血行がよくなり、筋肉の緊張が緩和されます。
カイロや湯たんぽを使ったり、足湯に浸かるのも良いでしょう。ただし、低温やけどには注意が必要です。
マタニティーストレッチ

適度なストレッチも血行の促進には有効です。腰を回したり、背中を伸ばすなど、心地よいと感じる形に体を動かしてみましょう。
体を動かしすぎるとかえってお腹が張ってしまうこともあるため、無理のない範囲で行ってこください。
マタニティーヨガ

妊娠中でも行えるヨガで、妊娠中の心と体をケアする目的で行われます。
通常のヨガと異なり、妊娠中の身体を考慮した動きが特徴です。
対象は妊娠15週以降で、妊娠経過に異常のない妊婦さんです。
初産の場合、出産予定日まで行えますが、経産婦の場合は産道が開きやすいため28〜30週頃までが適しています。
呼吸法によってバランスを崩している自律神経を整え、さまざまなポーズをとることで、妊娠によって変化した体調を整える効果が期待できます。
抱き枕

抱き枕を抱きかかえた状態で横向きに寝るとお腹を包み込む姿勢になり、お腹の重さも感じにくくなります。
抱き枕を使用することで、負担の軽減につながり、より良い睡眠をサポートすることができます。
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鎮痛薬(静脈内投与)
陣痛の痛みを和らげるために、静脈内投与法として麻酔薬やレミフェンタニル自己調節鎮痛法(PCA)が用いられます。
一般的に、自然陣痛を待機し、陣痛開始後に分娩の進行とご自身の痛みにあわせて鎮痛を開始します。
子宮口が全開大した後は、麻薬系鎮痛薬の使用を中止します。
特定の麻酔薬(局所麻酔や区域麻酔)
区域麻酔には、硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔(腰椎麻酔)、末梢神経ブロックなどがあり、腰部から麻酔薬を投与して、子宮や産道からの痛みを和らげる方法です。
硬膜外麻酔は、無痛分娩の標準的な方法として用いられています。
局所麻酔薬は、神経細胞の活動を抑制して、痛みの感覚の伝導を遮断します。
この局所麻酔薬はアレルギーが少なく、安全性が高いという利点があります。
痛誘発剤を使っても陣痛が来ない時は、赤ちゃんを包んでいる卵膜を破る人工破膜を行って、人工的に破水させます。
実施する直前に、胎児先進部が固定していること、臍帯下垂がないことを確認してから行います。
分娩誘発ついて

分娩を誘発する方法にはいくつかありますが、薬剤を使用する方法であるのが陣痛促進剤です。陣痛促進剤は子宮収縮を促す薬剤です。
出産予定日が近づくと、子宮を収縮させるホルモンが分泌されて陣痛が起こりますが、母子の状況によっては陣痛促進剤(内服ではプロスタグランジンを投与し、点滴ではオキシトシン)によって出産を早めた方が良いことがあります。
陣痛促進剤を使用するにあたって、分娩監視装置により陣痛と赤ちゃんの心拍を観察した上で、適切な薬剤を使用します。
陣痛促進剤が用いられる例には、以下があります。
赤ちゃんの健康状態が悪化する可能性があるとき
子宮内の環境が悪くなり発育が止まったり、子宮内感染したりする危険があるとき
妊婦さんが妊娠合併症を患わっているとき
破水しても陣痛が来ない時
予定日を過ぎている時
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まとめ

陣痛は赤ちゃんから「産まれるよ」というメッセージです。
痛みの感じ方は個人差がありますので陣痛に対するイメージはまちまちかもしれませんが、苦痛に耐える嫌なのものと捉えず、子宮口が全開大になるまでまずは全身の力を抜いてリラックスしましょう。
赤ちゃんと対面できた時の喜びを想像するのも良いかもしれませんね。