外来診療をしていると、妊娠初期から中期にかけて、ほぼ毎週のように聞かれる質問があります。
それが
「胎動は、いつから感じるものなのでしょうか?」
というものです。
特に初めて妊娠された方ほど、
- まだ胎動を感じないけど大丈夫?
- これって胎動なのか、腸の動きなのか分からない
- 周りの人はもう感じていると言っていて不安
といった気持ちを抱えがちです。
病気なんじゃないかと不安になるわよね。
「これは大丈夫なんだろうか?」という不安がある妊婦さんのために、医学的見地から解説します。
この記事では産婦人科医として日常診療でお伝えしている内容をもとに、妊娠初期〜中期の胎動の目安、正常範囲、注意すべきサインを書きました。
目次
胎動を感じ始める目安は「妊娠18〜20週」

まず結論からお伝えします。
初産婦が胎動を自覚し始めるのは、妊娠18〜20週頃が一般的です。
ただし、これはあくまで「平均」であり、16週頃から感じる方もいれば、22週頃になる方もいます。
- 妊娠20週未満で胎動を感じない → 基本的に正常範囲
- 妊娠中期は 日による差がかなり大きい
- 「急に全く感じなくなった」「他の症状を伴う」場合は 受診を推奨
- 迷ったら 受診してよい(=来院をためらう必要はない)
多少の早い・遅いは、ほぼすべて正常範囲です。
そもそも「胎動が少ない」とはどういう状態?

まず大切なのは、「胎動が少ない=異常」ではないという点です。
特に妊娠初期〜中期は、
- 赤ちゃんの大きさ
- 動きの強さ
- 母体の感じ方
に非常に大きな個人差があります。
医師側も、「回数が何回だから異常」とは一概に判断していません。
なぜ初産婦は胎動に気づきにくいのか?

理由①:胎動の感覚が分からない
初めての妊娠では、胎動が
- ガスが動く感じ
- 腸が鳴る感じ
- ふわっと泡が弾く感じ
に似ているため、「これが胎動なの?」と判断しづらいのです。
理由②:赤ちゃんがまだ小さい
妊娠初期〜中期前半は、赤ちゃんの動き自体が小さく、連続した動きとして感じにくい時期です。
【週数別】胎動の感じ方の目安

妊娠16〜19週|感じなくても問題ない時期
この時期は、胎動を全く感じなくても正常範囲です。
- まだ赤ちゃんが小さい
- 動きが弱く、皮膚まで伝わりにくい
- 初産婦は特に気づきにくい
👉 受診の必要は基本的にありません。
妊娠20〜21週|感じ始める人が増える時期
この頃から「これが胎動かも?」と感じる方が増えてきます。
ただし、
- 毎日感じなくてもOK
- 日によって差があって当然
👉 「昨日は感じたのに今日は分からない」だけでは受診不要です。
妊娠22〜24週|個人差が最も大きい時期
外来でいちばん相談が多いのがこの時期です。
- はっきり感じる人
- まだ弱くて自信がない人
が混在します。
👉 健診で問題がなければ、
「少ない気がする」だけで緊急性は低いです。
妊娠25週以降|「変化」が判断基準になる
この時期以降は、「以前と比べてどうか」 が重要になります。
- 明らかに弱くなった
- 丸一日ほとんど感じない
場合は、一度相談してよいラインです。
胎動を感じやすい体勢・時間帯はある?

胎動を感じやすくなるのは、主に次の条件がそろった時です。
- 体が静止している
- お腹への意識が向いている
- 赤ちゃんが起きている時間帯
👉 体勢や時間帯は、「胎動を増やす」ものではなく“気づきやすくする”ための補助と考えてください。
胎動を感じやすい体勢
① 横になっている時(特に仰向け・横向き)
もっとも多くの妊婦さんが「感じやすい」と言う体勢です。
理由
- 体の揺れが少ない
- お腹への意識が集中しやすい
- 赤ちゃんの動きが分かりやすい
「今日は少ないかも」と思ったら、5〜10分ほど横になってみるのがおすすめです。
② ソファや椅子で深く座っている時
完全に横にならなくても、
- 背もたれにもたれる
- お腹に力が入っていない
状態では、胎動に気づきやすくなります。
③ 入浴後・リラックスしている時
外来でもよく聞くのが、「お風呂のあとに動く気がします」
これは、
- 血流がよくなる
- 緊張が取れる
ことで、感覚が鋭くなるためと考えられます。
胎動を感じやすい時間帯
夜〜就寝前に感じやすい人が多い
医学的に「この時間に必ず動く」という決まりはありません。
ただし、
- 日中は動いていて気づかない
- 夜は静かで集中できる
ため、
夜に胎動を感じやすい人が多いのは事実です。
「昼は感じない=異常」ではありません。
食後に感じることがある理由
食後に胎動を感じる方もいますが、これは
- 血糖値の変化
- お腹への意識
が影響していると考えられています。
必ずしも毎回感じる必要はありません。
胎動を感じにくい“よくある状況”

外来で説明すると、多くの方が安心されるポイントです。
・仕事中・家事中
→ 意識が外に向いているため
・立っている・歩いている時
→ 体の揺れで分かりにくい
・赤ちゃんが眠っている時
→ 数時間動きが少ないこともあります
どれも異常ではありません。
「感じやすくする」ためにしていいこと・しなくていいこと

していいこと
- 静かな場所で横になる
- 深呼吸してリラックスする
- 時間帯を変えてみる
しなくていいこと
- 無理にお腹を押す
- 何度も姿勢を変え続ける
- ネット情報と比較し続ける
確認は1日1〜2回で十分です。
胎動が少ないと感じたら|判断表
| 状況 | 考えられること | 対応 |
|---|---|---|
| 20週未満で感じない | まだ正常範囲 | 次回健診まで様子見 |
| 日によって差がある | 睡眠リズム | 心配不要 |
| 動いていると感じない | 気づきにくい | 横になって再確認 |
| 急に感じなくなった | 変化の可能性 | 早めに相談 |
| 胎動+出血・腹痛 | 注意サイン | すぐ受診 |
よくある勘違い3つ(外来で本当に多い)

①「毎日同じ回数動かないと異常?」
→ 妊娠中期までは問題ありません。
②「強く蹴らないと胎動じゃない?」
→ 弱くても胎動です。
③「感じない=赤ちゃんが元気じゃない?」
→ この時期は感じ方の個人差が大きいです。
胎動で不安になりやすい時の考え方(医師の視点)
正直に言うと、ネット検索をすればするほど不安が強くなる方も少なくありません。
ただし、
- 胎動の開始時期
- 強さ
- 頻度
は、教科書どおりに揃うものではありません。
「気にしすぎかも」と思うくらいで相談していただいて構わない、というのが現場の本音です。
胎動でよくあるQ&A

Q1. 胎動が分からないまま22週を過ぎても大丈夫?
A. 健診で問題がなければ、多くの場合心配いりません。
Q2. 経産婦はなぜ早く感じる?
A. 感覚を知っているため、気づきやすいからです。
Q3. 夜の方が胎動を感じやすい?
A. 体を休めていると気づきやすくなります。
Q4. 胎動を毎日同じ時間に確認した方がいい?
A. その必要はありません。気づいた時で十分です。
Q5. 胎動を感じやすくする運動はある?
A. 特別な運動は必要ありません。
Q6. 胎動で性別は分かる?
A. 胎動で性別が分かるという医学的根拠はありません。
まとめ|不安になりすぎなくて大丈夫

胎動は、「正解を当てるもの」ではなく、少しずつ慣れていくものです。
- 初産婦の胎動は 18〜20週が目安
- 個人差が大きいのは正常
- 少ないと感じたら「表」で判断
- 迷ったら受診してOK
この記事が、不安を減らし、安心して妊娠期間を過ごす手助けになれば幸いです。
- 厚生労働省 妊娠・出産ガイド https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken10/
(※いずれも一般公開資料を参照)
